債務整理

個人再生でブラックリストに載るって本当?

個人再生は、借金が返せなくなった場合にその債務を合法的に減らせる、債務整理方法の1つです。

個人再生は、借金を抱えている人が、裁判所の認可を得て、借金を最大で10分の1に減額して貰い、その残りの借金を原則3年(特例で最長5年)で分割払いする(返済を完了できれば、減額された分の借金の支払義務が正式に免除される)という制度です。

借金の大幅な減額が見込めて、生活の再建を目指すのにうってつけな個人再生ですが、いくつかのデメリットもあります。個人再生を行なうことで、「ブラックリスト」に載ることもその1つです。

この記事では、個人再生などの債務整理をすると載る「ブラックリスト」についてと、その掲載期間について解説していきます。

1.ブラックリストの詳細

(1) ブラックリストとは?

ブラックリストとは、金融事故を起こした人の事を信用情報機関に登録した事故情報のことです。
よく聞く「ブラックリスト」という言葉は正式名称ではありません。あくまでも事故情報を登録される事を「ブラックリスト入り」と呼称しているだけで、「お金を貸すことができない人のリスト」のようなものは存在しません。

信用情報は、個人の「借入金の返済能力」に関する情報です(貸金業法第2条第13項)。

したがって、氏名、住所、生年月日、電話番号、勤務先、運転免許番号、健康保険証番号などの個人情報だけでなく、借入契約の年月日、借入金額、借入残高、延滞の有無なども、法定の必須情報として登録されます(貸金業法施行規則30条の13)。

個人再生の事実は、法定事項ではありませんが、 借入金の返済能力にかかわる重要な事項として、各信用情報機関の判断で登録事項に加えられています。

(2) 信用情報機関の種類

信用情報機関には、JICC(株式会社日本信用情報機構)・CIC(株式会社シー・アイ・シー)・通称KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つがあります。

金融機関(銀行・消費者金融)やクレジットカード会社など、申込者の審査をする企業は、信用情報機関の会員となり、金融事故を起こした人の事故情報を参照することで、過去に借金を滞納したり債務整理をしたりした事のある、返済能力に問題がある人を審査に通さないようにチェックしています。

JICCは、主に消費者金融や信販会社、銀行(ネット銀行や地方銀行)など、幅広い金融機関が加盟しています。

CICは、信販系と呼ばれ、主にクレジットカード会社が加盟しています。その他、信販会社、携帯電話会社、銀行系金融機関や消費者金融も数多く加盟しているようです。

KSCは、銀行系の業界団体が運営しています。都銀や地方銀行の他に、銀行系のクレジット会社、農協、信用金庫などが加盟しています。

各機関はそれぞれ独立した組織ですが、信用情報機関同士で情報を共有するシステムなので、JICCやCICに登録されている情報をKSCの会員も見られる、と考えていいでしょう(例えば、貸金業法第41条の24は、他の信用情報機関への情報提供に応じる義務があることを定めています)。

各信用情報機関の内部では、事故発生後ブラックリストに掲載される期間は決まっていて、その期間を短縮することはできません。もっとも、登録される期間は、信用情報機関や債務整理の方法によって異なります(詳しくは後述)。

(3) ブラックリストに載ることのデメリット

債務整理をするとブラックリストに載るということはお分かりいただけたと思いますが、具体的にブラックリストに載ることで起こるデメリットとは何でしょうか。

①今あるクレジットカードは使えなくなる

借金の滞納によって利用停止処分になったカードはもちろん、それ以外のクレジットカードも、途上与信(契約途中で行われるカード会社による信用チェック)や更新によって後からブラックリストに載っていることがバレると、結局は利用停止になります。

個人再生の手続中や再生計画認可後に、利用停止になっていないからといってカードを使って買い物をする(=借金をする)と、再生計画を後から取り消されたり(取り消されると、借金が減額前の状態に戻ってしまいます)、最悪の場合、詐欺罪として罰せられたりしてしまいます。

弁護士は、債務整理を依頼された際、依頼者のクレジットカードを全て預かり、カード会社に返送するか、物理的にハサミを入れて使えなくします。

②掲載期間中は新規のカードが作れず、ローンも組めない

前述のとおり、金融機関や貸金業者などは、新規のカードやローンの申し込みなどのお金を貸す際に、信用情報機関に登録された情報を参照して、その人にお金を貸すかどうかを判断します。そこに事故情報が載っていると、審査に落ちてしまいまいます。

つまり、ブラックリスト掲載期間中は、クレジットカード作成・利用や、ローンの締結等、業者からの新たな借金は一切できなくなるのです。

2.いつまでブラックリストに載る?

では、登録される期間とは、どのくらいなのでしょうか。

これは、信用情報機関の種類や債務整理方法によって異なります。

(1) 個人再生の場合

個人再生を利用する場合、JICC(日本信用情報機構)では5年、KSC(全国銀行個人信用情報センター)では10年間登録されます。他方、CICでは、個人再生は登録されません。

クレジットカード会社は主にJICCとCICに登録しているので、カードを個人再生後に新しく作りたい場合、最低5年間は作れないと考えて良いです。

(2) その他の債務整理の場合

個人再生の他にも、債務整理の方法はあります。それらを利用した場合の登録期間も見てみましょう。

 

個人再生

自己破産

任意整理

JICC

5年

5年

5年

CIC

なし(ただし、下記参照)

5年

なし(ただし、下記参照)

KSC

10年

10年

5年

JICCの場合は、どの債務整理方法を利用した場合でも、5年間記載されます。

CICは、自己破産は記載されます。個人再生・任意整理を利用した場合は、そのこと自体は記載されません。しかし、個人再生や任意整理の結果、支払条件と支払総額が変更となったことは記載されますので、金融機関側が見れば、通常は、過去に債務整理を行なった事実がわかってしまいます。

KSCは個人再生・自己破産をした場合10年、任意整理は5年記載されます。

このように、ブラックリスト扱いの期間については、各信用情報機関毎に個別の運用を行なっており、「破産なら○年、再生なら○年」といった統一のルールが定められているわけではありません。

3.掲載が終わった後に気を付けるべきこと

(1) 新規の申し込みはできるが、一度に大量の申し込みは危険

ブラックリストから削除されたかどうかは、各信用情報機関に開示請求することで確認できます。

削除されていることを確認して、新しくクレジットカードを申し込む際、一度に何社もの審査を受けると「この人はお金に困っているのではないか」などと怪しまれてしまい、審査落ちになる可能性が高いです。

審査落ちの情報も信用情報機関に登録されるため、仮にブラックリスト明けになったとしても、一度に大量の申し込みはしない方が賢明でしょう。

(2) すぐに大きなローンは申し込まない

ブラックリストから消えた後は、携帯電話の分割払い・審査に通りやすいクレジットカードなど、最初は、ハードルの低いものから少しずつ利用していくべきです。

いきなり高額商品のローンなどに申し込むと、信用の実績がないため審査が通らない可能性が高いです(そうすると、前述のとおり、審査落ちの情報が載ってしまいます)。

(3) 二度の債務整理にならないように注意

再度クレジットカードを使えるようになったからと言っても、使い過ぎには注意です。多額の借金返済に追われる生活に逆戻りしないように、再生計画通りに返済を続け、完済した後もしっかり自己管理をして生活する必要があります。

なお、個人再生のうち給与所得者等再生を利用した場合は、それから7年間は、再度の給与所得者等再生の利用や自己破産はできません。

4.まとめ

個人再生などの債務整理をすると、ブラックリストに載ってしまいます。
その掲載期間は5~10年で、掲載期間中は新規のクレカは作れず、ローンは組めません。しかし、債務整理は合法的に借金を返済できるとても有効な手続きです。

借金返済に追われているなら、必要なリスクと割り切って債務整理を行なうべきです。一定期間経てば、カードはまた作れるようになります。

個人再生を行なうと、借金生活から抜け出せる可能性があり、さらに、住宅ローンの残っている持ち家を残せる可能性もあるので、家族の環境を変化させずに済みます。

あるいは、個人再生以外にも、自己破産や任意整理といった別の債務整理方法もありますが、どの手続がその人に適切なのかはケースによるので、弁護士と相談して見極める必要があります。

借金問題で悩んでいる方、個人再生などの債務整理を考えている方は、弁護士にご相談下さい。

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