公務員でも自己破産はできる!共済組合からの借金には要注意
「役所勤めだけれど、自己破産はできるのだろうか。何か処罰を受けないか、辞めさせられないか心配…」
結論から言えば、公務員の方でも自己破産をすることができます。公務員というだけで自己破産手続に支障が出ることはありませんし、自己破産により仕事に影響が出ることもありません。
ただし、共済組合からの借金があると、自己破産手続の負担が重くなり、また、職場に自己破産したことがバレてしまうおそれがとても高くなります。
ここでは、公務員の方が自己破産する場合について、共済組合からの借金に関する問題点を、特に詳しく説明します。
このコラムの目次
1.公務員の自己破産について
公務員でも、自己破産をすることはできます。
インターネットなどで自己破産のデメリットを調べると、「自己破産をすると公務員として働けなくなるのではないか」「職場にバレて処分を受けるのではないか」という不安を覚えるようなことが書かれているかもしれませんが、これらについては、基本的に誤解です。
とはいえ、問題となるのは共済組合からの借金がある場合です。
共済組合は、公務員の医療保険や年金に関する事業を取り扱っているのみならず、主に公務員向けに、生活費など限られた目的のために、低金利での融資を行っています。
共済組合からの借金を、自己破産手続による免除の対象とすると、
- 手続負担が重くなる
- 職場に自己破産がばれる
といったリスクが生じます。
ちなみに、自己破産手続では、「債権者平等の原則」と言って、全ての債権者を公平に扱う必要がありますので、共済組合からの借入を手続から外すことは出来ません。
そのため、自己破産手続をすれば、必然的に上記のリスクが生じてしまいます。
2.共済組合から借金をしている場合の注意点
(1) 手続負担が重くなる
共済組合からの借金を給与からの天引きで返済していること、自己破産では債権者平等の原則があること。この二つが相まって、自己破産手続にかかる費用や手間が増えることになってしまいます。
まず、自己破産手続には、「管財事件」と「同時廃止」という二つの種類の手続があり、一般的には、管財事件の方が、債務者の金銭的・精神的負担などが重くなりがちなものとなっています。
この振り分けの基準ですが、おおざっぱに言えば、債権者に配当できるだけの財産がある場合や、債務者を原則としては免責できないとされている事情(免責不許可事由)がある場合には管財事件が、そのような事情が無い簡単な案件では同時廃止が用いられます。
単にあなたが公務員であるというだけで、負担が重くなりがちな管財事件にされることはありません。
しかし、共済組合はほとんどの場合、債務者からの返済を、職場と連携して給料からの天引きで行っています。そして、債務者から依頼を受けた弁護士から、自己破産手続をするから天引きを停止せよとの通知を受けても、借金回収のための天引きを止めることはまずしてくれません。
こうなると、他の債権者は、通知に従い借金の取立てを止めているのに、共済組合だけが借金を回収し続けている状態になってしまいます。
他の債権者からすれば、自分たちに配当されるはずだった財産を共済組合が独り占めすることは許せません。そこで、管財事件で裁判所に選任され、配当処理を行う「破産管財人」が、偏頗弁済(偏った返済)の相手に対し「否認権」という権限によって、共済組合が不公平にも天引きしていた金額相当額を回収することになります。
もともと管財事件にすべき事情がなくても、この処理をするために手続が管財事件となってしまい、債務者の負担が重くなるおそれが生じるのです。
(2) 職場に自己破産がばれる
ほとんどの場合は、共済組合からの借入があるときに自己破産手続をすると、職場に自己破産がばれてしまいます。
借入先は共済組合である以上、あくまで自己破産手続の相手となる債権者は共済組合のみであり、職場の公共団体などは手続の対象には直接含まれません。
しかし、共済組合は、給料からの天引きで借金を回収していますから、給料を支払っている職場と密接に連携しています。
そのため、共済組合から勤務先に対して自己破産の事実が伝わってしまい、職場に自己破産の事実がばれてしまうおそれがあるのです。
法律上、自己破産をしたからと言って公務員としての地位に直接不利益が生じるわけではありません。しかし、職場の誰かに自分が自己破産をしたことが知られてしまっているということが、勤務中の不安感を招くことはあります。
自己破産手続をすると、政府の機関紙である官報に、住所氏名が掲載されてしまいます。とはいえ、一般の方はまず官報を隅々まで読むことはありませんから、官報のせいで身近な方に自己破産したことがバレる心配は無用です。
もっとも、自己破産手続中に制限される資格に関する業界では、官報をチェックして、従業員が自己破産手続をしていないかをチェックしています。警備員や保険外交員の方は、自己破産をすることを隠しとおせません。
ですが、公務員については、そもそも資格制限の対象ではありません。勤務先である公共団体などが官報をチェックしていることは、ほとんどの場合ありえないでしょう。
3.公務員は原則として資格制限の対象にならない
ここまで、共済組合からの借金がある公務員の方に対して注意喚起をしてきました。
もっとも、共済組合からの借金があることで自己破産ができなくなるわけではありません。
そして、他の自己破産手続のデメリットの中でも、公務員の方が気にしがちな「資格制限」は、さほど問題にはならないのです。
一般的に、職業が自己破産手続の障害となってしまう問題としては、自己破産手続中の資格制限があります。しかし、公務員は、ごく一部の専門的な例外を除いて、資格制限の対象とはなりません。
資格制限の対象となる職業は、弁護士などの士業や、警備員、保険外交員など、他人の財産を管理する性質をもつものです。
一方、公務員は確かに国民の財産である税金から給料を受け取っていますが、直接他人の財産を管理している訳ではありません。
そのため、自己破産手続中であっても、公務員として働き続けることは可能です。
また、懲戒処分の理由にもなりません。
4.公務員の自己破産は弁護士に相談を
公務員であっても、共済組合からの借入が無い限り、公務員ではない人と同じように自己破産できます。むしろ、資格制限の対象とならないことから、警備員や保険外交員などよりもよほど自己破産手続をしやすいと言えるでしょう。
ただし、共済組合からの借入がある場合には、給料からの天引きがされているでしょうから、手続負担の増大は避けられず、職場への発覚も覚悟しなければいけません。
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題を自己破産で解決してきた豊富な実績があります。その中には、公務員の方も多数いらっしゃったため、共済組合への対応についても、適切な対処が可能です。是非、お気軽にご相談下さい
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