債務整理

個人再生すると賃貸を追い出される?

個人再生は借金を解決する「債務整理」方法の1つです。

しかし、個人再生の知名度は他よりも低く、任意整理や自己破産を選ぶ人の方が多いのが実情です。
そのため、個人再生に関する知識が不足し、手続を行う前に二の足を踏んでしまう方もいらっしゃるようです。

例えば、個人再生後の「賃貸住宅」について不安を持っている方がいます。

「個人再生をすると賃貸住宅から追い出されるのではないか?」
「大家さんに個人再生のことを知られたら、出て行けといわれるのではないか?」
こういった疑問に答えるために、この記事では個人再生が賃貸に与える影響を解説します。

個人再生をしようと考えている人で、特に現在賃貸住宅に住んでいる方は、ぜひ本記事を参考にしてください。

1.個人再生とは

個人再生は、裁判所を通して行う債務整理の1つです。
大きな特徴は以下の4点です。

(1) 債務の大幅な減額

個人再生をすると、借金が大きくカットされる可能性があります。
減額率は最大で9割にも及ぶので、認められれば生活が一気に楽になるでしょう。

(2) 3年程度の分割払いが可能

個人再生後は、債務者は少なくしてもらった借金を、原則3年程度かけて毎月少しずつ返済していきます。

一括返済を求められている人であっても分割返済が可能になるため、無理なく借金を返すことが可能です。

(3) マイホームを手元に残せる

同じ債務整理であっても、自己破産をすると大抵の場合マイホームは手放すことになります。

また、住宅ローンを支払中の人がローンを返せなくなると、債権者は住宅に設定した抵当権を実行し、家をお金に換えて債権の回収を図ります(結果として債務者は持ち家を失ってしまいます)。

しかし、個人再生には「住宅ローン特則」という制度があります。
これを利用した場合、住宅ローンを従来通り支払うことを条件として、持ち家を処分せずに個人再生をすることができます。

住宅ローン特則を使えば、住宅ローン以外の借金を大きく減らすことができるうえに、住み慣れた我が家に住み続けることが可能となるのです。

(4) 基本的に財産を処分せずに済む

自己破産をした場合、一定以上の自分の財産をお金に換えて、債権者への支払いに充てなければなりません。
一方個人再生では、一部の例外を除いて自分の財産はそのまま手元に残すことができます。

例外の中で代表的なものの1つが、マイカーローンを支払中の自動車です。
ローンを完済するまではローンの債権者に自動車の所有権があることが多いため、債務整理をするとローンの債権者が自己の所有権に基づいて自動車を回収してしまいます。

しかし、そういったもの以外の財産は基本的に処分を免れます。
「自分の財産は手元に残せるだろうか?」「手放すことになる財産はあるのだろうか?」と不安な方は、弁護士に相談して確かめるといいでしょう。

2.賃貸物件と個人再生

では、本題です。
個人再生では持ち家(マイホーム)を残せる可能性があると述べましたが、賃貸住宅に住んでいる方が個人再生をするとどうなるのでしょうか?

結論から言うと、個人再生をしても、賃貸住宅にはそのまま住み続けることが可能です。

そもそも大家側が店子の個人再生を知ること自体ほとんどありません。
例外的なケースについては後で言及しますが、原則的にはこれまで通り家賃を支払い続けて賃貸住宅に住むことができます。

【クレジットカード払いの物件は注意が必要】
問題となるのが、家賃をクレジットカード(クレカ)で支払うことになっている物件です。
個人再生をすると、そのときの債権者が「信用情報機関」という組織に「この人が個人再生しましたよ」という情報を伝えます。信用情報機関には個人の借金に関する情報が集められており、金融機関やクレジットカード会社などは審査の際に信用情報機関に問い合わせを行います。
そこでもし個人再生を含む債務整理の情報が見つかると、金融機関側は「この人にお金を貸したら回収できないかもしれない」と判断します。この結果、融資やクレカの審査に落ちてしまうのです。
既に使っているクレカも弁護士に個人再生を依頼すると使えなくなってしまうことが多いので、クレカでの家賃の支払いができなくなります。家賃をクレカ払いにしている人は、支払方法の変更を余儀なくされるでしょう。

3.家賃を滞納した状態で個人再生した場合

個人再生をしても、基本的には従来通り賃貸物件に住めることはお分かりいただけたと思います。
しかし、未払いの家賃がある状態で個人再生をした場合、少し事情が変わってきます。

(1) 家賃を踏み倒し追い出される可能性

個人再生の対象になるのは、原則として、債務者が持つ「全ての債務」です。
「この借金は個人再生で減額してもらって、こっちの借金は個人再生の対象に含めない」という選択はできません。
(※住宅ローン特則によって住宅ローンを減額の対象にしないことができますが、これはあくまで例外的な処理だと思ってください。)

未払いの家賃も債務の1種には違いないため、個人再生によって減額されてしまいます。
すると、大家側としては「家賃を踏み倒された!」と思うはずです。

そもそも賃貸借契約は、家賃を支払うことでそこに住まわせてもらうという契約です。
契約通りに家賃を支払えなければ、賃借人側の債務不履行、つまり契約違反ということで、退去を請求されても仕方ありません。

(2) 慌てて家賃を払ってはいけない

賃貸物件を失わないために、個人再生前に滞納している家賃を支払ってしまおうと考える方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、個人再生には、全ての債権者を平等に扱うという決まりがあります。
そのため、特定の債権者にのみ有利になるような返済をしてはいけません。

えこひいきになる返済は「偏頗弁済」と呼ばれ、これをすると個人再生後の弁済額に偏頗弁済した金額が上乗せされる可能性があります。また、個人再生の申立てが認められなくなるリスクもあります。

しかし、家賃を支払わなければ、債務不履行ということで賃貸借契約を解除されてしまうかもしれません。
債務者としては、なんとかして滞納した家賃を支払って、賃貸借契約の解除を回避したいはずです。

この場合の解決方法は主に2つあります。

①親族などに肩代わりしてもらう

これが最も手取り早いと思われる方法です。
親族などの第三者に支払ってもらえるのであれば、お願いして家賃を払ってもらいましょう。

しかし、個人再生をする本人が実質的に滞納分の家賃を払っているような状態だと、やはり偏頗弁済と判断される可能性があります。

弁護士に相談して、偏頗弁済を疑われないような方法で肩代わりしてもらうのがいいでしょう。

②「生活必要金」として裁判所を説得する

個人再生は債務者の生活の再建を目的としているので、個人再生により賃貸物件を追い出されてしまうとなると本末転倒です。
この場合、裁判所を説得することで、家賃の優先的な支払いを認めてもらえる可能性があります。

しかし、独断で行うことは厳禁です。また、裁判所への報告なども、個人では難しいでしょう。必ず弁護士と相談して、最善の方法を考え、実行してもらいましょう。

これ以外に、敷金を滞納家賃に充当してもらうという方法もあります。

4.個人再生後の賃貸の悩みは弁護士へ

個人再生した後でも、家賃を滞納していなければ、基本的には従来通りに家賃を払い続けることで賃貸住宅に住むことができます。
ただし家賃をクレジットカード払いにしている場合は、支払方法を切り替えるか、家主側との交渉などが必要になるかもしれません。

問題は家賃を滞納している場合です。
第三者に支払ってもらうにせよ、敷金を充当してもらうにせよ、慎重な対応が必要となります。

下手な対応をすると偏頗弁済になってしまう可能性があるので、弁護士と相談して対応を協議することをお勧めします。

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